薪(まき)ストーブのある生活を特別なことと考えていませんか。薪(まき)ストーブは、かつて囲炉裏(いろり)や火鉢がどこの家庭にもあったように、条件さえ合えばどんな家にも設置できます。建築家であり、また薪(まき)ストーブのユーザーとしてお伝えできる、暖炉のことについてお話ししましょう。
薪ストーブを知る
暖かさのわけ
熱を伝える方法は「対流」「放射(輻射)」「伝導」の3つです。
- 対流は暖房器具から直接暖気(熱気)を放出し、熱風や冷風などの不快な気流が生じます。
- 放射(輻射)は空気を暖めるのではなく直接物を暖めるので室内に不快な気流が生じません。
- 伝導は直接暖房装置に触れることで熱が伝わります。
たとえば、エアコンは「対流」・石油ファンヒーターも同じく「対流」です。床暖房は「伝導」「放射」「ゆるやかな対流」です。伝える方法を3つとも備えている優れた暖房器具です。薪ストーブは「放射」と「対流」です。特に放射の力が大きいです。
薪(まき)ストーブの特徴
- 放射(輻射)の力が特に大きい暖房器具・遠赤外線で空気でなく物を暖める・全体にポカポカと暖かい
- 室内に気流を起こさず周囲のものを暖めるために不快にならない・室温にむらが少ない
- 炎が見えて視覚的に暖まる(床暖房にはない利点)
- CO2ゼロ・薪(木)が光合成により蓄えていた炭素を燃焼時に排出するプラスマイナスゼロの考え方(電気、ガス、石油等の石炭燃料を使わない)
- 強制的に排気されて換気があまり必要ない
- 薪割りや着火など、自分が快適さをつくるという満足感が得られる(これを面倒と思える人には不向き)
- シンプルな暖房器具である(なかなか壊れない、メンテナンスが簡単)
- 薪が調達できれば経済的(炉が密閉されていて燃費が良い)
これほど利点の多い暖房器具はほかにはないでしょう。
薪(まき)ストーブの暖まり方
薪ストーブは暖炉と違い炉が密閉されているために、暖まりやすく薪の燃費が良く経済的です。本体の鋳物から遠赤外線を発して柔らかな暖房効果が得られます。遠赤外線は物に吸収されると熱に変わり、奥深くに浸透し人体にも優しく体の芯から温めてくれます。こうして、暖まったストーブ本体と壁や天井などに触れている空気も暖められて部屋全体が暖まります。表面のみを暖める暖房器具には出来ない、室内の温度差が少ない心地よい暖かさを味わえます。
空気をよごさない
薪ストーブは環境に悪影響を与えない暖房器具です。
木は、成長過程で大気中にある二酸化炭素(CO2)と水を吸収して大きくなります。そして朽ち果てる過程で、吸収した二酸化炭素を発生させます。長い期間で見れば木と空気の間を炭素が循環しているだけで、炭素は増えることも減ることもありません。このように、安定した炭素の循環をカーボンニュートラルと呼びます。カーボンは炭素・ニュートラルは中立という意味です。
薪を燃やすと二酸化炭素(CO2)が発生します。燃焼により発する二酸化炭素(CO2)は、もともと空気中から樹木に吸収されてていたものなので、元の場所に戻るだけです。木がある樹齢に達したら伐採して建築材や薪として利用し、新しい木を植えていく。化石燃料には限りがありますが、薪は循環型の資源と言えます。
化石燃料は地下から掘り出して使用するため、空気中の二酸化炭素(CO2)が増えてしまいます。化石燃料の二酸化炭素排出量は薪の約3倍もあり、地球温暖化を進めてしまいます。
「こんなこと聞いていいの?」というようなことでも、なんでもお聞かせください。私たちは、建築主である皆さまと家を建てる職人さんたちを結びます。
「家は3度建てないと満足できるものにならない」と言われますが、3度も建て替えられる人は多くはありません。私どもは、設計理念に基づき、ひとつずつ丁寧にきめ細かくゆっくりと設計を進めてまいります。